先月はこのページで四谷三丁目、大阪鮨の老舗「八竹」の閉店のお話をさせていただきました。今日はいつも元気なというか、ますます活況を呈している日暮里の繊維街をご紹介させてください。
JR日暮里駅から谷中方向とは反対側の広場に出て、徒歩数分の場所に百店近い生地屋さんが並んでおります。パリのモンマルトルの丘のすそ野に集まっている大型生地屋さんによく通いましたが、今は質量ともに断然日暮里が気に入っております。ロンドンの町中にあるLiberty本店とはコンセプトがちがうので比べようがありませんが、生地好きには両店ともたまらない魅力です。路地裏や脇道まで数えたら百店を超える、日暮里の繊維街は名実ともに世界一、Quality and Priceの意味でもナイスです。ボタンや裏地からインテリア雑貨まで、繊維関係のあらゆる商品が町中にぎっしり。パッチワークなど手芸がご趣味の方は端切れを、モード関係のプロの方は試作用の生地を探しにいらっしゃいます。また、それぞれのお店の方がみなさんベテランぞろいで、用尺だけでなく生地にまつわる全ジャンルに精通。棚を埋め尽くす生地の中にイタリア製やスイス製など、輸入生地が紛れているのも魅力です。ブランド品や輸入品が、現地でより安価に調達できるのも不思議です。
大量生産にプラスして、通販サービスが蔓延する昨今、生地を買ってチクチクは時代錯誤もいいところのようですが、だからこその思いが募ります。こういう時代だからこそ、好きな生地の残り布をチクチク手縫いしたハンカチに、いとおしさが募ります。ミシンがなくても、手縫いでOK。ポケットでおとなしくしている、木綿のハンカチに指先が触れてハッピー!!!!その意味でも日暮里の生地屋さんは、訪れるだけで自分なりの幸せに出会える宝庫です。