diary日 記 2023 / 08/ 01

アメリカ文学のストレートな魅力にはまってます

読んでいないで書かねばと念じつつ、またしても読みだしたら止まりません。それになんといってもamazonという強い見方がいるので、本棚の奥をひっくり返さなくてもワン・クリックで翌々日にはポストに届いて最高。本が売れなくなったという書店さんと版元さんの嘆きも深刻ですが、日本人の読書量が減ったとばかりはいえないかも。少なくとも私は、調べものも含めて、若いころより読んでます。今年は結果を出したいと焦りつつ、国内外の名作を耽読。学生のころ読み漁った作品をamazonで買い直し、寸暇を惜しんで冷房がきいた自室のベッドに寝っ転がって読書。Amazonの封筒の中身が岩波書店のこともありますが、ほとんどが新潮文庫です。『移動祝祭日』を読み直したくて手に取ったヘミングウェイが引き金になり、フィッツジェラルドやスタインベックなど、ロスト・ジェネレーションの作品にはまりました。わが国でロスト・ジェネレーションといえばバブル崩壊による就職氷河期世代、1970年から1984年生まれの世代をさすそうです。ご本家アメリカのそれは、第一次と二次の世界大戦の間です。長く栄華を誇った大英帝国に代わって、アメリカが覇者に躍り出た時期に他なりません。それにしても20世紀初頭あたりからのアメリカは、小説家もスケールがちがいます。ヘミングウェイやフィッツジェラルド、スタインベックの小説をすぐ映画化しているのですから、ハリウッドの総称で呼ばれるアメリカの映画界が、全世界にもたらした文化的な影響力すごいです。

今月の冒頭に引用しましたヘミングウェイの「もし幸運にも、若者の頃、パリで暮らすことができたなら、その後の人生をどこですごそうとも、パリはついてくる。パリは移動祝祭日だからだ」の『移動祝祭日』は彼の後半の作品で、4年後の1954年にノーベル文学賞を受賞。『誰がために鐘は鳴る』のバークマン、濡れた瞳が印象的でしたね。豊かな生活を捨て、闘牛士を追って去っていった『日はまた昇る』のエヴァ・ガートナーも、ものすごくいい女でした。本の話のはずが、いつの間にか名作劇場になってしまいましたね。ヘミングウェイの小説第一作より先に発表されて話題になっていた、『雨の朝 巴里に死す』のフィッツジェラルドが彼の作品についてアドバイスしています。『雨の朝……』の主演はエリザベス・テーラーでめちゃめちゃ可愛い。フィッツジェラルドといえば、なんといっても『グレート・ギャッビー』につきますが、タイトルとして印象的なのは、『雨の朝……』の方でしょうか。ヘミングウェイは行動の作家で、第一次大戦に赤十字に所属して北イタリアの前線に参加し、長期におよんだスペイン内戦にも従軍。『海と老人』も、彼自身が腕のいいフィッシャーマンであり冒険家だったから書けたわけで、それまでの小説家のイメージを覆したといえそうです。ヘミングウェイに続くスタインベックの『怒りの葡萄』、読みましたよね。大恐慌に続いた悪天候で農作物の収穫がままならず、オクラホマから豊饒な農地を求めてカリフォルニアに移住した一族の壮絶なドラマは、社会問題にもなった話題作でした。あの『風と共に去りぬ』の次に売れたそうですが、スタインベックの短編集がまたいいんですよね。彼も1962年、ノーベル文学賞をもらっています。ヘミングウェイもスタインベックも、受賞にふさわしく徹底的な社会派作家でした。古いと言われそうですが、圧倒的な読み応えですから、酷暑を読書で乗り切ってください。