diary日 記 2021 / 09 / 01

海の向こうで戦争が始まる?

ほんとうは次回オリンピック開催が決まっているパリについて書きたかったんですが、それどころではなくなった気がして、村上龍さんの小説の題名を拝借しました。『限りなく透明に近いブルー』の衝撃が強かったので、第二作もすぐ買って東横線と山手線の往復で読み終えました。今は東京メトロの南北線と副都心線の接続で横浜・池袋間が大幅に短縮されましたが、当時は片道1時間半。アマゾンの古書もありませんでしたから読みたい本は定価で、横浜なら有隣堂さん、池袋では今はなき芳林堂さんで買ってました。『海の向こうで……』は現実の戦争の話ではなく、浜辺で出会った金髪の美女と主人公のイマジネーションの交叉が読みどころだったように記憶してます。ところが今回、アメリカ軍の繰り上げ撤退でソドム化したアフガニスタンのようすをTVのニュースで観たり、ネットに書かれている記事を読んでも、頭の中でハレーションを起こしているかのように、どの情報も事実関係が曖昧に思えてなりません。20年前の今月、9月11日にマンハッタンの高層ビル二棟がジハードの名の挺身航空機の突撃で、ゆっくり崩落していく映像が甦ります。今回、タリバンのスポークスマンがわが国に対して、日本とは友好関係があるから出て行かないでもらいたいけど自衛隊はいらないという趣旨のことを報じてますが、一概にはね。なにしろわが国は日米友好協定を大上段に掲げているわけですし、アフガニスタンを制圧したタリバンが戦っている相手はアメリカですもの。「どうしたらいいのかしら……」と、海の向こうで始まりそうな戦争のとばっちりが来るのではと妄想が膨らみます。憲法第九条で「戦争の放棄」を宣言していても、いざとなったらわかりませんよね。戦争の脅威が迫っているような気がするのは、臆病な私だけかしら??? あれこれ思いを巡らせ、パリで暮らしていた後半にフランスの徴兵制が全廃されたときのことを思い出して、つい今しがたまで胸に燻っていた不安がかき消され、PCに向かってにたつく私がおります。

1996年にフランスの徴兵制廃止が決まり、翌、97年から実施。アフガニスタンとアメリカの話が、風が吹いて桶屋になってしまいましたが、冒頭の希望通りにパリのネタに着地。Paris2024の開会式の予告で若いアスリートたちに囲まれノリノリだったマクロン大統領は、フランス史上初の兵役を経験していない大統領なんです。徴兵制が廃止になった時点でマクロン青年は、若干18才だったからでした。大聖堂で知られるアミアンというフランスの中都市で開業医をしていらしたご両親、とりわけお母さんは徴兵制の廃止のニュースに小躍りなさったかもしれませんよ。パリ時代のママ友たちで、とくに息子さんを持つママたちは、当時の政府の決定に無条件にバンザーイ!!!! 「ああ、よかった。兵役期間に息子が精神異常をきたすのではないかと心配してたのよ」、「戦地に行っても、うちの息子では役に立たないから、傭兵制に切り替えて正解よ」、「これで税金の大きなムダ遣いが、ひとつ解消されたわけね」といった、ポジティブな反応ばかりでした。マクロン大統領のお名前が出たところで、もうひとつ。徴兵制度とは別物ですが、つい最近、大統領が若者たちの社会的な役割を高めるために、奉仕活動を提案。国防、安全保障の分野での社会参加の義務化を提唱。大統領の内なるパッションはなんとなく伝わった気がしますが、国民の反応はイマイチのようでおかしいですね(笑)。