diary日 記 2021 / 04 / 15

作って食べて、舌で楽しむフランス旅行 続編

先回は南仏のサラダ・ニソワーズとドルドーニュ地方によくある砂肝の温製サラダについてお話ししましたが、今日はアルザス地方とノルマンディー地方を思い浮かべてお読みください。ドーテの『風車小屋便り』に入っている『最後の授業』のヴィヴ・ラ・フランスの台詞と画家、アンシの民族衣装を着た子供たちのかわいい絵画があまりにも有名なので、ドイツ人憲兵に虐げられたアルザスっ子といったイメージが定着。でも現実はそうではなく、ドイツとフランスで領土戦をくりかえしていたので、フランス人が被害者ではなくておたがいさま。鉱物資源と森林・水力資源に恵まれたアルザス地方は、ヨーロッパの二大国がいつも獲りあっていた地域でした。第二次大戦のドイツ完敗で領土戦にケリがつき最終的にフランスになったわけですが、アルザシエンヌたちはおかげで今でもクール。独自路線で、自分たちはアルザス人つまりアルザシエンヌであることを誇りにしてます。窓辺や庭先、町角を色とりどりの花で飾り、大昔から変わらないアルザスらしい建物に住んで、自分たちの郷土料理とお菓子を堪能。アルザスはお菓子大国フランスの、まさに優等生。ピエール・エルメ、クリストフ・フェルデール、ジエラール・ミュロなど、優秀なパティシエを輩出。もっとも、クリームやバターをふんだんに使うお菓子は、質実ともに寒い地方の方が冴えてますしね。アルザス地方のお話はこのくらいにして、郷土色あふれる美味しいタルト・フランベをこれから作りましょう。パン生地を極薄に伸ばして、スライス玉葱とベーコンをたっぷり乗せ、その上にチーズをかけてオーブンでこんがり焼きます。パン生地ですから小麦粉に混ぜるのは、ベーキングパウダーではなくイースト。パン地を麺棒で薄く伸ばして、空焼きをして具材を乗せた方がパリパリ感があって私は好きです。実は最近、パン生地の代用品を、スーパーのピザ・コーナーで見つけちゃいました。それをこっそりお教えしたくて、タルト・フランベにした次第です。なにかというと、ピザ生地より薄い既製品のトルティーヤで、ほぼ完璧なタルト・フランベが作れました。ただし、まん丸ですとピザに見えてしまうので、四角にカットしてくださいね。

アルザスの次は、一挙にノルマンディー地方に行ってみましょう。せっかくですから、ダーバ・ダバ・ダバ・ダの『男と女』の舞台になった海岸線に沿って、ドーヴィルとトゥルーヴィの砂浜を歩きましょう。ドーヴィルには競馬場もありスノッブな町ですが、川を挟んだトゥルーヴィルの方がいい感じ。パリのサン・ラザール駅から行けるのも、ありがたいです。家路に急ぐ印象派の画家たちが、芸術談義の末に飛び乗った列車と同じです。光を求めてセーヌ川を下りルーアンのカテドラルを描き、さらにご来光を描いて「日の出」と題したモネは、印象派の旗手ですもんね。旧港のヨットの帆にカモメが絡む光景に、ただうっとり。近くのカフェかブラスリーに入って、迷わずムール貝を注文。BGMにエリックティーのピアノが流れていたりしてね。そんなオンフルールに行ったつもりになって、私たちもムール貝をいただきましょう。そのためにまず、冷凍のムール貝をお求めください。そうそう、ムール貝で検索すると、お手頃なお値段でフランス製のムール貝が通販で簡単に買えますしね。蓋のあるお鍋に冷凍のままムール貝を全部入れて、火力は大。そこにバターとニンニクとパセリを振りかけて蓋して高温で数分蒸し煮。水っぽくなるので、私は白ワインは入れません。食べ終わり、スープ皿に残ったムールのソースをパンにつけて完食。いかがでしたか、ノルマンディーへの心の旅路。