diary日 記 2019 / 11 / 15

南仏旅行

ヘミングウェイの言葉に「愛していない人と旅に出てはいけない」というのがありますが、本当です。学生時代に入っていた美術部の先輩ご夫妻と3人で、すてきな南仏旅行に行ってきました。パリから生活の拠点を東京に移してちょうど20年たつので、南仏を訪れるのは20年ぶり。この間、パリに行っては日帰りできる、600㌔圏内の地方都市をくまなく再訪。長く住んでいて、こうして原稿のネタにしているフランスの町の今がどうなっているのか、自分の目でたしかめるつもりで網羅してます。ところが南仏はいかんせん遠く、日帰りは無理。気になっていた地域なので、先輩に背中を押されて決行しました。パリはトランジットだけで、国内線に乗り換えてニースに直行。それがですね、なんとパリ発ニース行き最終便に乗り遅れるという、ハプニングがございました。空港構内を急ぎましたが、羽田でチェックインをすませた私たちの荷物が積み込んであるニース行き最終便のゲートが、寸前のところでクローズ。唖然と立ち止まる私たちの真横がお客さまカウンターだったのが、不幸中の幸いでした。地上職員のマダムが私たちのチケットを見て、「あら、残念!飛行場の近くのホテルを手配するから、ディナーを召し上がって、今晩はゆっくり休んで。朝食もついていて、快適よ。明朝の8時30分発のニース行きに、変更しときますね」と。この旅は仕事ではありませんので、なにがあってもセ・ラ・ヴィの覚悟ができました。

翌朝、到着したニース空港で、前日に着いている私たちのトランクをピック・アップ。予約しておいたホテルまで、タクシーで20分ほど。リヴィエラを象徴する華やかな海岸線のプロムナード・アングレを通り、町中のホテルへ。空港職員のマダムがおっしゃったとおり、前夜に睡眠をたっぷりとっておきましたので、荷物をほどいて早々にニース観光をスタート。今回の南仏旅行の目的は「巨匠たちのアトリエ巡り」ですから、まずは海岸とは反対の高台にある『シャガール美術館』へ。シャガール自身が気に入った場所に建てたアトリエに、他の美術館にないほど膨大な数の大作ばかりが展示されております。四半世紀も前に訪れたときとちがって、国立美術館になっているそこは目を見張るほどの充実ぶり。手で触れる距離にシャガールの原画があり、それも額装はガラス無し。作品の近くの床で、先生に引率されて来ている子供たちがマジックペンで絵を描写しているのですから驚きです。庭園の隅にあるにわか仕立てのレストランが予想外に美味しく、旅行の最初のお食事で幸先のよさを予感。「面白いね、来てよかったよ」の先輩のつぶやきに、私はすっかり上機嫌。その足で『マチス美術館』に寄り、夜は旧市街でイタリアン。翌日はバスでニース観光の目玉、『マーグ財団』があるサンポールと『マチス礼拝堂』で知られるヴァンスへ。10月末というオフシーズンの静かさが、私たちの旅に味方してくれたかのようでしたが、アヴィニョンに行くといった私に、ホテルのフロントのマドモアゼルがいった「TGVのストライキよ」の言葉でドキッ。「ああ、やっぱりフランスだわ」と頭を切り替えて、別ルートでアヴィニョンにまいりましたので、次回も南仏話にお付き合いくださいね。