diary日 記 2019 / 08 / 15

山と渓谷社の『パリ便利帳』

この春あたりから今も、私の知人友人でフランスの地方やパリにご旅行で行かれる方が多いんですよ。ご主人さまのお仕事が終わってという方もいらして、中には80才のお母さまに最後の親孝行とおっしゃる方もいらして心和みます。どなたも、はじめてのフランス旅行ではないので旅行は手作り。「フランスのことなら任せて」とばかりに私の出番。自分が行くつもりになって、あれこれ調べてアドバイス。新幹線のTGVが全国を網羅しているので、リヨンから日帰りでアヴィニョンとか、シャルトルやシャンティならパリから日帰りといった感じに汽車の旅をご提案。自画自賛になってお恥ずかしいですが、それをしながらフランス全土についてスキルアップした自分に気づいて深夜ニンマリ。そんなある晩、パリに暮らしはじめて5年後ぐらいに、老舗出版社の山と渓谷社さんのご依頼で仕上げた『パリ便利帳』のことを思い出しました。<地球の歩き方>がないころでしたから延々と版を重ね、手持ちの最後の改訂版の年号を見ましたら1992年。初版本がないので定かではありませんが、私の記憶では1982年だったと思います。原稿も手書きからワープロになり、やがてパソコン。親友の青山の制作プロダクションに間に入ってもらい、私が書いた原稿と写真をレイアウト。丸一冊をウチが作る感じで、仕上げました。未熟ながら、パリの隅々を歩いたのですから真剣さがちがいました。

なにしろ上質紙で380頁ですから、今でも通用する知識の宝庫。“パリスタッフが足で集めた”と副題がついてますがウソで、ほとんど私(笑)。知る・見る・遊ぶ・楽しむ・食べる・買うまでは、当時でも実業の日本という出版社の<ブルーガイド>がございましたが、他紙と決定的にちがっていたのが、それに暮らす・医す・学ぶが加わっていたこと。今、パリ便利帳で検索しますと、短期貸しアパルトマンなど簡単な生活案内が出てきますが、私の『パリ便利帳』とは別物。暮らすの項目にある日本からの送金の箇所を眺めて、郵便局と東京銀行しか手段がなかったとしみじみ。あのころ、当の私がパリ東京銀行最後の個人客になろうとは考えてもおりませんでした。申請しても取得できない滞在許可書のことですとか、よくまあ考えたものです。なに食わぬ顔して書いてますが、実生活では税金、アパルトマンの管理費、交通違反の罰金のややこしさに参りました。ずっと現地校だった娘の学校で苦労しなかったことだけが、せめてもの救いでしょうか。ネットでパリのホテルを検索し、部屋の様子をじっくり眺めて予約できる時代の到来を思うと、テクノロジーの圧勝ですね。いい勉強になりました、仕事ってありがたいです。じきに吹く涼風を思って、残暑を乗り切りましょう。