diary日 記 2019 / 06 / 01

『枯葉』のジャック・プレヴェール

鷗外、鏡花や谷崎を読みたくなったらアマゾンをクリック。ところが、先回、申しました『ノートル・ダム・ド・パリ』のDVDがなぜか買えなかったので、親友のFさんに注文してもらって入手。今しがた、ブルーレイになった1956年版を観て自室に戻りました。アンソニー・クインとジーナ・ロロブリジータだったのでハリウッド映画だと思っていたのは私のまちがいで、正真正銘のフランス映画でした。監督は学生のころ渋谷駅前にあった前線座という映画館で観て印象に残っている、『首輪のない犬』のジャン・ドラノワ。そして驚いたのが、『ノートル・ダム・ド・パリ』の脚色が、なんとジャック・プレヴェールでした。そう、シャンソンの代表のような『枯葉』の詞を書いた詩人で、劇作家でもあります。『枯葉』を歌わせたらグレコといわれるような大物の歌手と、レストランで隣り合わせたことがあります。サルトルたち実存主義の仲間で、個性派として知られるグレコでしたが、私人としての彼女はコケティッシュなおばあちゃま。私たち日本人が横に座ったのでグレコが一緒にいたボーイフレンドに、こうささやいてにっこり。「私、日本人にとても人気があるのよ」と。現在もご存命で、来日回数は22回。ウィキペディアですぐ調べられるのですから、岩波や新潮の文庫が買えなくなっても仕方ないかも。

『枯葉』を作詞したジャック・プレヴェールは1900年に生まれ1977年に亡くなっているので、ご本人との接点は残念ながらありません。ただ、今でも東京コンサートがあるとかならず行くことにしている京都出身のシャンソン歌手、ワサブローさんがプレヴェールの奥さまと親しくしておられました。ワサブローさんからお聞きした、プレヴェールについての奥さまのお話が面白かった。今思い返すと、私たちがヒマにしていた時期は、ほんの一時でした。わが国がバブル絶頂期に突入して、フランス関連の取材依頼が急増。たとえば出版社が分厚い月刊誌を次々に刊行した時代になり、「パリ特集」の取材や原稿依頼がふえて、遊んでいられなくなりました。ワサブローさんも着実に才能を発揮し、フランスのシャンソン界で活躍。狭いパリにいるのにお会いする機会がないままでしたが、1995年ごろだったと思います。たまたま夜、テレビをつけましたら、フランス国営放送で<フランス語を母国語のように美しく話す外国人>の特集をしていて、ワサブローさんが出演しておられました。そのとき、プレヴェールについて語っていらしたと思います。プレヴェールの代表作に、『パロール』という単行本があります。居間の低いテーブルの上の、花瓶の横にその本を置いていたときのことでした。超のつく有名メゾンに勤務する友人が表紙を見て、「ああ、気分が悪くなった」といって、胃のあたりをさすりはじめたのには笑えました。国語が大きらいな生徒、わが国よりフランスの方が多かった気がします。