diary日 記 2019 / 05 / 01

ノートル・ダム・ド・パリ

21世紀の科学をもってしても、ノートル・ダム寺院の崩落を、呆然と見ていなくてはならなかったとは。火災と気づいた時点で、寺院の真上に人工的なゲリラ豪雨を降らせるとか、燃焼に不可欠な酸素を遮断するとかetc. いずれにしても、万事休す。そして、こんなときにまで、フランス人のプロパガンダの手腕を見せつけられるとは。鎮火するかしないかの時期に再建費用のために2億ユーロ(253億円)の寄付を、真っ先に名乗り出たのがLVMHグループと聞いて納得。ルイ・ヴィトンやシャンパンのモエなどで知られる総帥のベルナール・アルノー氏でした。先ずれば人を制すで「オオオッ!!!」と、世界中が注目しましたものね。それにしても、石造りだと思っていたノートル・ダム寺院に、木材がたくさん使われていた点に驚かれた方が多かったのではありませんか?鉄製のエッフェル塔が建つ以前にできた地域は、たとえばマレ地区やカルチエ・ラタン一帯など、外観は石ですが芯に木材が使われています。パリで私が住んていたサン・ミッシェル広場のアパルトマンもそうで、外側の漆喰を剥がすと、立派な太い梁が露出。接合部分に鉄釘は使われてなくて、木製の楔や木釘でした。建物の骨格が鉄のオスマニアン様式は見た目が頑丈そうですが、鉄は錆びる。それにくらべて旧パリに残る、芯が木製の建物は耐久性が高いといわれてましたが、火の怖さは想定外。バラ窓のステンドグラスや貴重な宗教芸施術品などは出火と気づいた司祭の指示で、運び出されたそうです。ちなみに、ノートルは私たちという意味でダムは女性ですから、ノートル・ダムはマリアさまの寺院でパリの守護神。潤沢な資金源を裏付けに、5年以内の復興も実現しそうですね。以上がイントロで、私がほんとうに書きたかったのは、『ノートルダムのせむし男』というタイトルの1956年作のハリウッド映画についてです。原作はもちろんビクトル・ユゴーですが、数ある作品の中でアンソニー・クインとジーナ・ロロブリジータのが圧巻。「古い!」と言われそうですが、オツムが足りないピュアな鐘つき男のカジモド役を、アンソニー・クインが演じ切ってます。

舞台はルイ11世治下の15世紀。寺院の前に捨てられた醜い赤ん坊は副司祭フロロに拾われて育ち、カジモドと名付けられノートル・ダムの鐘つきになります。醜さゆえに人前に出ることを禁じられていた主人公のカジモドが、寺院の梁をジャングルのお猿さんのように飛び移って鐘を突く場面に、火事で消失した全景が映ります。主従関係が成り立っていたフロロとカジモドの平穏な日々が、祭り目当てにパリの町に入り込んだ乞食集団にいた、美貌のジプシー娘、エスメラルダの出現で激変。聖職者フロロが彼女に一目惚れ、忘れていた煩悩の火がめえらめら。カジモドはといえば、生まれてはじめて優しくしてくれた女性がエスメラルダでしたから、さあ大変。ノートル・ダム寺院前の広場で魔女狩り裁判にかけられ絶命したエスメラルダをカジモドが抱きかかえ、聖域ゆえに追手が踏み込めない寺院に連れ帰ります。セットを使った場面もあるでしょうが、コンピュータ・グラフィックのない時代。火災のニュースを見てからパソコンで、56年版CDが欲しくてアマゾンをクリックしましたら品切れ状態。みなさまもぜひ、ご覧になってください、56年版ですよ。