diary日 記 2018 / 09 / 15

アパルトマンの管理組合

今日は先回お約束した、「パリのアパルトマンの管理組合」についてお話します。その前に、パリにいたころ東京から仕事で来た親友が言っていた、印象に残っている話をお聞きください。それは親友が住んでいる、杉並区のマンションの管理組合の、ある日の理事会の光景でした。「お当番制で回って来るから仕方ないけど、理事会は時間の無駄。みんな勝手なこと言って、話しが進まないの。たとえば、ベランダに布団を干してはいけない規則を破って、布団を干しちゃう吉田さんのことが議題なのね。そしたらある人が、“吉田さんの実家、布団屋だったな。だから、布団を大切にするんだよね”」忙しい彼女の憤りはわかりますが、私は思わずプフッ―。たしかに煩わしいでしょうが、理詰めでシビアなパリの管理組合の総会を経験している私は彼女の話を聞いて、ホノボノと笑えるマンションの自主管理の理事会が、羨ましく思えたものです。10年ほど前からわが国でも、第三者管理者方式といって、マンションの理事長を区分所有者から選出しないで、外部のプロに任せるシステムを国が率先して進めているとか。フランスの管理組合がまさにそれで、つまりはマンション管理運営のすべてをお金で解決する方法です。

パリ生活の後半10年を住んだ、住所がサン・ミッシェル広場のアパルトマンの管理費は恥ずかしくて申し上げられないほど高額でした。広場に面したドアこそ一枚ですが奥が広くて、敷地内の中庭を挟んでAからDまでの4棟が密着。最古の部分は「ガルガンチュア物語」に出てくるほどで15世紀に建てられ、広場に面したオスマニアン様式が19世紀中ごろで、パリ市の歴史建造物。屋根裏部屋を含めると所有者はなんと196世帯だそうでしたが、建物に住んでいる持ち主は10%以下。国外居住の持ち主も多く、所有者合意の修繕積立金の設定などぜったいに無理。年に一度の管理組合の総会が近くの修道院の回廊に面した大きな一室を借りて開かれるわけですが、まるで上場企業の株式総会さながら。ちがうのは株主の立場にある居住者が小さくなっていて、前に一列に座っている外部委託した管理組合のプロ集団が厳めしい顔で君臨している点でした。管理組合の社員から、前年に起きた原因がわからない水漏れ工事の費用について、共有部分のガラス磨き料金について、コンシェルジュと呼ばれる管理人さんが使った洗剤の合計金額について、セーヌ川から浸水した地下カーヴの土留め工事費の内訳についてなどの膨大な報告があり、管理組合宛のクレーム手紙の内容と差出人を実名で公開。周りを見回しても、知った顔はゼロ。血の通わないマンションの総会は、パリでこりごり。せめて半分は自主管理して、日本的な安心マンションライフを続けましょう。