diary日 記 2018 / 05 / 15

リバティの生地も好き

今週、とても素晴らしい本を頂戴しました。『リバティプリント デザイン図鑑』という厚さが2㌢以上ある本で、表紙の真ん中にあたかもシールが貼りつけてあるように、“英国リバティ社公式BOOK”と書かれた丸い金ピカマークがあります。図鑑をくださったのはご著者で、テキスタイル界の大御所、酒井惠美(めぐみ)さん。285頁におよぶ総カラーのパターン・リストの最初を飾っているのが1887年のピーコックで、ウィリアム・モリスの不朽の名作が続きます。「あっ、これ買って娘のワンピース作った!」、「そうそう、女の子たちにシュシュを作ってプレゼントした生地、フェリシテだったんだわ」という具合に、あの頃、あの時のリバティ・プリントと共生していたパリ時代が蘇りました。リストの前に、リバティ社の歴史やプリントの技法などが簡潔に述べられていて、この一冊でリバティ早わかり。1843年、ヴィクトリア女王の時代に生まれたアーサー・L・リバティ氏が1875年に「リバティ商会」を設立した時の3人の従業員のひとりに、日本人の男子が働いていたとあったのは驚きでした。イースト・エンドのグレート・マルボロ・ストリートにあるチューダー調の「リバティ百貨店」は、ロンドンに行くたびに今でも絶対に寄る場所です。本の話に戻りますが、素材について書かれた箇所に、タナローンと呼ばれている人気商品があります。リバティといえばタナローンですが、それはシルクが手に入りにくい状況で開発されたらしい点が妙に説得力ありました。なにしろ大の生地好きなので、最後の最後まで読んじゃいました、2800円はお安いです。

しばらく前ですが、アルザスに本社があるDMC社についてinf.でしか書かなかったので、あらためてお聴きください。DMCさんはわが国では刺繍糸メーカーとして定着してますが、フランスではミシン糸も手縫い糸もDMCなんです。手芸といえば「雄鶏社」といわれていた時代にご縁があって、クロスステッチの本2冊の「はじめに」と、図案がDMCコレクションの刺繍の「テキスト」だけお手伝いしたのが10年ぐらい前のことでした。その本がなんと、誠文堂さんでリニゥーアル発売されました。今の出版不況を考えると、奇跡といえる快挙です。でなにがいいたいかといえば、DMCのお膝元のアルザス地方はミュルーズといえば、フランスの繊維産業の中心地。上段落でリバティ社について書いたので、勢い余って下段でアルザスの生地に触れたくなったわけです。フランスの生地ではプロヴァンス模様の「ソレイアード」や ヴェルサイユ近郊の「トワル・ド・ジュイ」が有名ですが、 実はプリント生地の最大手はアルザス地方のミュルーズ。フランスの繊維産業を牽引する双璧が、DMC社とミュルーズの生地です。このHPの動くカバーになっている、ピンクの細密模様の生地をご確認くださいな。