diary日 記 2018 / 05 / 01

ホワイト・アスパラ

アスパラガスというと、わが国ではグリーン・アスパラが主流ですよね。ところがフランスでは、アスパラといえば白なんです。パリで暮らしはじめた当時の記憶の中に、ホワイト・アスパラがあります。なん冊もある拙著のどれかにそれが、2回登場してます。パリに着いて間もないころ、知人宅のディナーに招かれたとき、前菜のお皿の上に茹でたそれが皮つきのまま乗っていたのが最初でした。フランスに行く前からフランス料理について、わずかながら知識はありました。銀座と代官山にあった、「レンガ屋」さんにも行ってました。今思うと、町場フレンチの黎明期だったわけで、つい最近お亡くなりになったポール・ボキュース氏のシェフ週間もありました。トリュフとフォアグラは私も知っておりましたが、ホワイト・アスパラは未知でした。さて、知人宅で出されたものの、どうやって食べていいのか困って、前に座っていた人のすることを真剣に眺めたものです。まず左手で太いホワイト・アスパラの穂先の方を持ち、右手のナイフで根元の方から各自で皮を剥いてお皿におくんです。そして、テーブルの真ん中に用意されていた溶かしバターに卵の黄身を混ぜたソース・オランデーズをからめて、ナイフとホークでカットしていただく。文字通り見様見真似で、彼らのする通りに皮を剥くことに必死で、あのときは食べた気がしませんでした。2度目にそれが登場するのは、初回から数年たってからのことでした。今でも家庭では、皮付きのまま供される場合がありますが、レストランではもちろん皮ナシです。

パリ時代、春から夏にかけてのわが家のおもてなし料理の前菜に、ホワイト・アスパラが定番になりました。Lサイズなら1キロで12本ぐらいなので、一人4本ずつ用意しますから、6人なら2キロ買いました。1キロの束になっていて、細ければ本数が増えますが、ホワイト・アスパラに関しては太い方がだんぜん美味しいんです。それに、なんといってもホワイト・アスパラの剥き方をマスターしたのが画期的でした。午後の繁華街の裏道を、ひとりで歩いていたときのことでした。レストランの狭い調理場にたち込めた湯気を逃がすために、わずかに開けたドアの隙間から見た光景の、なんと衝撃的だったことでしょう。料理人ではなく、レタスを洗ったりジャガイモの皮剥きなどの下働きをする人たちの、ホワイト・アスパラを素早く剥く手の巧みさを、私はただ唖然として眺めたものです。その帰りにマルシェに寄って、太くて白いアスパラを求めて、家に帰ってさっそく実践。1キロを剥き終わったころには、ありがたいことにホワイト・アスパラの一刀剥きが私の得意技になっておりました。オランデーズではなく、フランス製のマスタードに自家製のドレシングを混ぜたソースが好評です。フランス産とはお味がちがいますが、北海道産のホワイと・アスパラも絶品です。