diary日 記 2017 / 07 / 01

12に分かれたフランスの観光区分

久しぶりに先日、フランス観光開発機構のイベントに参加しました。ちなみに私のパリ時代はフランス政府観光局と呼ばれていた組織のワークショップでした。パリに住んで子育てもしましたが、もともと歴女を自認する私は、ことあるごとに地方行脚。『美(うま)しくにフランス』(柴田書店)という本を出した93年にはすでに、フランスの地方料理にのめり込み状態。その後に『フランスの田舎町』(日経BP社)や『フランスの小さな町物語』(JTB出版)でしたから、今思うと時期尚早だったかも。自分のことばかり言わないで話を、フランス観光開発機構に戻しましょう。白金の瀟洒なホテル、「八芳園」の大広間を借り切って、現地を仕切るスタッフの地方ごとのブースができてました。そこでまず渡された小冊子の目次にあった地方の区分地図を見て、「アラ!」の驚きの声を発したのでした。

5角形した全土が22地方に決まっていたのに、それが12色に分かれているではありませんか。もちろん観光開発的な合理化というわけで、県がなくなったわけでも地方がなくなったわけでもありません。それでは以下、どうなったかを具体的にご説明しましょう。フランス第3の都市リヨンがあるローヌ・アルプ地方と、ガイドブックとタイヤメーカーで知られるミシュラン本社があるクレルモン・フェランが首都のオーヴェルニュ地方が合体。大西洋岸のボルドー、ポワトー・シャラントがヌーヴェル・アキテーヌ地方に統合、etc。とはいえフランスの地方で私たちに人気のアルザス地方やブルターニュ地方、典雅なお城巡りが人気のロワール地方、ヴェルサイユ宮殿をいただくパリ市を取り囲むイル・ド・フランス地区などは従来通り。あのモン・サン・ミッシェルの写真が、モネのジヴェルニー以西からセーヌ河口に至るノルマンディー地方のページに載っております。ここまでキーボードを打ったところでようやく頭が冷えて、こんな感慨を覚えたのでした。「騒ぐことはなかったのよ。よく見れば、なにも変わっていないじゃないの」と。便宜上なされた観光地の色分けマップをじっくり眺めると、あまねくではなくて、売れる地域をさらにクローズアップといった、行政側の明確な意図が浮き上がります。テロというマイナス要因はありますが、世界中から人が集まるフランスの観光立国たる所以に揺るぎなし。それにしてもなぜ、農業国であることが矜持のフランスにばかり、おしゃれなブランド品が集まっているのかしら? もしかしたら、これもフレンチ・パラドックスなのかしら?美味しい料理と素敵なモノと地方はたしかに魅力ですが、フランス人に見習うことがあるとすれば、なにかにつけてパラドックスで片付けてしまう究極のアバウト精神かも。新しい観光区分に目を白黒させてないで、テキトウでいながらフィニッシュが上手な彼らのやり方を、とくと拝見しましょう。それでは、またね!!!!