diary日 記 2017 / 02 / 15

「 ベーシック・インカム 」

「誰がなっても同じ」ではないのが、フランスの大統領です。今期かぎりのオランド大統領については、お勉強はできたかもしれませんが、かなり残念な結果でした。女性のスキャンダルしか特ダネがなかった大統領も、フランスで珍しいです。もう大昔の話になりますが1981年、ミッテランが大統領に就任した瞬間、フランスという国の「大統領次第」を目の当たりにしました。あのときフランスにいた不法滞在の外国人に労働許可書がいっせいに交付され、社会党政権樹立の面目躍如でした。まあ、わが国との関係からしてトランプ大統領のチカラとは比較になりませんが、今年のフランス大統領選はあんがい楽しめそうです。ある意味、危険な同盟関係にある日米とちがってフランスのことなら、私たちは傍観者でいられます。原子力や武器といったグレーな部分もありますが、日仏関係はブランド品とカルチャーが取り持つ優しいご縁。熱い選挙戦が繰り広げられそうな今年のフランス大統領選も、興味本位で眺められるというものです。そこで今日は、社会党から立候補したブノワ・アモン候補が公約に上げている、ベーシック・インカムについて考えてみましょう。

ベーシック・インカムは以前から、スイスやオランダ、フィンランドやアメリカでも話題になりました。対象人数をかぎって実施されたところもありますが、いずれもかなり真剣に協議されていることはたしかです。「最低所得保証」と訳すのが妥当な気がしますし、わが国でも実現可能な制度ではあるのですが、両国の価値観の相違が歴然。そもそも今回、元教育大臣のブノワ・アモンが掲げているのが、18~25歳の国民全員に毎月、750ユーロ(日本円で約90000円)が一律に支給される政策です。最終的に国民全員に枠を広げるそうで、90000円もらって働かない人がいてもいいし、それ以上豊かな生活を望むなら働けばいいわけです。わが国の生活保護受給額がざっと120000円だとして、「ヘエーッ!」と感心するのはおかどちがい。ベーシック・インカムと生活保護とは、天と地の開きがあります。働いても、働かなくてもいいという労働に選択の余地があって、それがフランス人の生きる権利に直結している点が、わが国の生活保護とはまったくの別物。この背景には、機械化による人的労働の減少による失業率の増大が目前に迫っているそうですが、フランスには少子化による人口減がない。それにしても、職業選択の自由以前に労働選択の自由があろうとは、考えさせられますよね。神のもとの平等ですかね。ただし、ベーシック・インカムを実現するには、税収を50%以上ふやす必要があるそうですから、おいそれとはいきません。でもですよ、教育費無料もすべて税金で賄われているからこそである点を踏まえれば、ベーシック・インカムもありかも。「働かない選択」に、果たしてどれだけの人が手をあげるかしら。その前に極右政権の可能性も無視できない、大統領選に注目ですね。