diary日 記 2016 / 12 / 15

「 犬を飼えないアパルトマンがあるなんて 」

テクノロジーの進化には、ただただ驚きの日々です。ついていくことさえ困難な状況ですが、こと国際電話はありがたいことだらけ。当たり前なのかもしれませんが、パリからかかってくる場合はほぼ無料です。パソコンに接続しているらしく、こちらに用事があって電話したとしても、出てくださった相手がかならずこうおっしゃる。「こちらからかけ直すから、ちょっと待ってて。じゃあ、切るから」で、ガチャン。そして1分もたたないうちに、電話がかかってくるのでした。PC音痴さんでも簡単に操作ができるらしく、インターネットが苦手な人でも接続できるとか。大昔、時計の秒針を見つめてパリから日本に電話して話しておりました。料金は倍近かったですが、国際電話の着払い制度もありました。それがタダとは、まったく隔世の感がございます。時代も変わるわけで、おかげでフランスからの電話が往々にして長くなる。タダだと思うと、どうでもいいことまでおしゃべりしてしまうんです。つい先ほど、親友のアンヌからかかってきた電話が長くなったきっかけは、彼女の飼い犬が吠えたことからでした。

そもそもが、アンヌの親友が東京に来ることを私に伝えるための電話でした。ところが、よくいるじゃないですか、かかってきた電話に反応するワンちゃん。アンヌのワンちゃんは彼女がスマホをしても吠えるそうです。深夜にかかってくるスマホにも吠えるそうで、気になるのは近隣の苦情です。アンヌが住んでいるアパルトマンは不夜城のパリの真ん中とはいえ、多くのパリっ子は普通に眠っている。アンヌのワンちゃんが、スマホの向こうでいっこうに鳴きやまないものですから、私がそのことに話題を振りましたら、返ってきたのがこれです。「いつもはおとなしいのよ。私がスマホで話していると、決まって吠えるのよ。レストランに連れてってもおりこうさんに吠えないのに、私が話している相手が見えないから不安らしいの。ところで、犬の鳴き声に文句をいう人がいるの?犬が飼えないアパルトマンがあるの、東京に?」と、スマホからアンヌの驚きの声が聴こえます。たしかに、パリには犬猫が飼えなアパルトマンはまずありません。友人宅を訪ねると、ドアに辿り着いた私にいち早く気づいてくれるのも訪問先で飼われているワンちゃんで、ドア越しに私を歓迎してくれたものでした。でも一度だけありましたっけ、こんなことが。お隣の1Kに住んでいた若いカップルの留守に、彼らの大型犬が深夜に鳴き続けたことが。同じアパルトマンの住人が鳴き声がうるさいと通報したらしく、しばらくして消防団員がやってきて彼らの部屋の鍵を壊して、鳴き続けるワンちゃんを連れて行ったのでした。翌日、帰宅してことの次第を知ったカップルに悪びれた風はみじんもなく、彼らの嘆きは消防団員が壊した鍵の修理代の高さでした。ワンちゃんは消防署できちんとご飯を食べさせてもらったらしく、実に晴れやかな顔でカップルに連れられて戻ってきました。なんというか、なんというか、パリ時代を思い出すとトホホなことが…