diary日 記 2016 / 11 / 01

「 憧れの対象でなくなったパリジェンヌ 」

20年暮らしたパリから生活の拠点を東京に移して、15年が経ちました。そのうち丸8年、ジョルジュ・サンド(略してGS)という焼き菓子屋をやっておりました。GSを閉めて、そろそろ2年になります。二足の草鞋を履いていたGS時代の運動量を思うと、今の私が太ってもあきらめましょう。あの頃、毎日、店の1階と2階を上がり降りして、厨房では全力でお菓子の生地を捏ね捏ねしていたのですから。本日など、スマホの万歩計が2236で止まりました。近くのコンビニに、宅配便を出しに行っただけなのですもの。それにいたしましても変わったものです、フランスやフランス人に対する日本人の意識が。

『お金がなくても平気なフランス人 お金があっても不安な日本人』が単行本で出た2003年当時、英米ものとちがってフランスものの本は売れないといわれておりました。ジンクスを覆すかのように、おかげさまで今でも書店に並んでおります。そして、やがてフランスとフランス人は、私たち日本人の憧れではなくなった。憧れるどころか、"10着しか持っていないのにおしゃれに見えるのはなぜ?"といった、呆れと驚きの対象になりました。関連本がたくさん出版され、フランスとフランス人についての情報が人々に浸透。ただし言語に関しては英語の独壇場で、大学の仏文科は人気凋落。私たちがフランス語を学ばなくても、当のフランス人が英会話を積極的に習得してくれているのでパリ旅行も英語でOK。高級感があったフランス料理も、いつの間にかイタリア料理に横メシの王座を明け渡しております。ちなみに料理名などをカタカナで横書きする洋食系を横メシ、日本語で縦書きする和食は縦メシと呼ばれました。いつものように逸れた話を戻しますと、長いこと私たち日本人にとって外国人の代名詞だったアメリカ人に代わって、今、気になるのは、ひねくれているけれど面白いフランス人です。そしてせっかくなら、フランス的エスプリのきいた暮らしがみたい。ドレッシングでくてくてになった残りサラダもぜったいに捨てない、ヨレヨレになったセーターを平気で来ている彼女たち。英語をしゃべるようになっても忘れない、ケチが美徳のフランス人魂っていいですね。着手したばかりなのでタイトルは未定ですが、あなたのお隣りに住んでいるかのようにリアルに、フランス人の当たり前の日常を一冊に盛り込みたいです。トレ・ビアンな暮らしのエッセンスたっぷりな本に仕上げますから、楽しみにしていらしてください。