いつも同じセーターで、恥ずかしくないの?

2015/2/15 

こう言われて、さすがの私も「ごめん、いつも同じ格好してて」と謝りました。GS時代はプリントか色無地で、毎日ちがうカーディガンでした。下は自作の濃いグレーのタイトスカートで、色も型も同じでしたが、実はなん枚もありました。上はちょっと華やかにして、これも自作の黒地の長いエプロンが締めになってました。オーブンの熱で厨房が暑かったですし、なにしろ1階と2階を駆け回っていたので、年中七分袖のカーディガンでした。カーディガンといっても、前のボタンが外れないように縫いつけてあったので、見ためはセーター風。汗もかきましたし、毎日、とっかえひっかえ。ところが、どうでしょう。店をやめたとたん、部屋が寒いのと、肉体労働から遠ざかったものですから、私のワードローブが大変換。おまけに、たった一枚に固定してしまったのには笑えます。本当はもう一枚あるのですが、そちらは洗い替えていどで、好きさ加減が大ちがい。朝、自室を出る前に着替えてメイクして、深夜にシャワーを浴びるまで、ずっとそのまま。着ごもり状態といったら変ですが、新宿でも銀座でもランチでも、よほどのディナーでないかぎり、出かけるときはその上にコートを羽織るだけ。超お気に入りだけを着ていられる幸せに、この冬は酔いしれております。あげくの果てになにを思うかというと、このセーターが駄目になったらどうしましょうと、真剣に思案。

東京に転居した年の、冬が間近かごろのことでした。ピアノを弾くのが大好きな姉のお伴で訪れた、都庁ちかくの高層ビルで開催されていた伊勢丹のバーゲン会場が、このセーターとの出会いでした。襟つきの、濃いチャコールグレーのメンズで、厚手のカシミヤ。バーゲンで半額になっても高かったので躊躇し、それでも欲しかったのでカゴに入れました。ところがレジでの支払いは、なんと姉がしてくれたのでした。冒頭の、「いつも同じセーター着ていて、よく恥ずかしくないね」といったのは、他ならない姉でした。買ってくれた本人が忘れるほど、あれから十年以上の歳月がたっております。
「ぜんぜん恥ずかしくないですよ、同じもの着てても。だって、それが私の定番なんだから。まだ来年も、再来年も着る。でも、とことんダメになったら、どうしよう」と私が申しましたら姉が、「編んであげる。もっと上手に編めるから、貸してごらん。カシミヤの色見本を持っているから、毛糸はネットで買えるし」と、まさに女神の恩寵。安心にもいろいろあって、作れれば、好きな物を着られる安心があることを知りました。もうひと息で春ですね、バイバイ。