感謝の小皿料理

2014/11/15 

江戸情緒あふれる神楽坂には、江戸時代から現在にいたる老舗がなん軒もあります。GSをやめて本業の物書き稼業に戻ろうと決意した今、そうした江戸や明治、大正から家業を継いでいる人たちの本音をひしと感じました。私が愛用している岩波の『国語辞典』で稼業と家業について、引いてみました。家業の方が先に出ていて、「@家の生活を立てるための職業。Aその家が代代従事してきた職業」とあり、つぎの稼業は、「商売。しごと。なりわい」と意外にシンプルでした。継続は力なりとGSを開いてわが身を鼓舞したことがございましたが、体力には限界がありました。昼間、店であったことを深夜に思い出して、PCの前でうふふっ。人、それぞれに面白いなと、つくづく思いました。もちろん、ヒヤッとしたこともたびたびでした。喜怒哀楽の四文字のなかで、GSには怒の字がありませんでした。なーんて、いえないかも。あと、ひと月ございますものね。そこで最終日、おいでくださった方にお出しする、小皿料理を考えてみました。開店からずっと、毎月の第四木曜日に開催していた<GSの夕べ>にご用意していた、フランスの地方料理の総集編になりそうです。そういえば、フランスの地方料理がメジャーになる以前の93年、柴田書店から出した『美しくにフランス』というハードカバーの懐かしい本を、GSにお持ちくださった方がいらっしゃいました。ほんと、読者さんって、ありがたいです。

フランス全国にある、リエットとよばれる<豚肉のパテ>と地中海一帯で定番の、タラのペーストの<ブランダード・モリュ>を、GS特製のクルミと干しぶどうたっぷりの全粒粉のパンをトーストしてのせましょう。そう、これが「どんなサンドイッチですかと、聞かれますよね」といわれてはじめた、GSメニューで人気の「ジョルジュ・サンド」の正体です。キッシュはほうれん草とチーズの二種類の他に、ヨーロッパで松茸に匹敵するほど珍重され、イタリア語のポルチーニの呼称で知られるセップやムール貝の<キッシュ>もいいですね。このほかに、キャロット・ラぺやキャビア・ド・オーベルジンヌといった、拙著に登場するお野菜の簡単レシピ総出演。メインは、こっそり自慢の<クスクス>とか<シュークルート>、お食事会で一番人気だった<ロースト・ビーフ>も焼きます。もちろん<GSの夕べ>の真骨頂の、ワインも飲み放題。ぱぱっと召し上がって、さっさとお帰りくださるお客さまも長居組も、どちらも大歓迎。お運びのお手伝いも、ついでにお願いね。それと……、どうしようかしら言うの……でも、意を決して「お花はいらないからネ!」で、お花の代わりにみなさんの笑顔をください。閉店パーティーになりそうで、ちょっと変ですね(笑)。