パリっ子も花粉症?

2013/3/15 

「はい。パリっ子も木の芽どきは、鼻をくしゅくしゅします」。おしゃれなパリジェンヌがひと目もはばからず、口と小鼻を派手に左右に動かします。そのさまがまるで「奥さまは魔女」のサマンサみたいで、くしゃみも盛大。あたりかまわずぶーぶー、鼻をかむときは大きな音を立てるのですから笑えます。フランス人だけではなく欧米では幼児に、鼻をすすってはダメよと、鼻をしっかりかむ習慣を徹底的に躾けます。無料のポケットティッシュはありませんが、スーパーで買うそれは分厚くて丈夫。鼻を一度かんだくらいでは、だれも捨てません。一度どころか二度も三度も、丸めたクリネックスをポケットから取り出して再利用。ハンカチで鼻をかむ仕草も堂に入っていて、使って丸めたハンカチをつぎは丸まったまま、鼻に持っていきぶーぶー。家庭用の洗濯機の水の温度が五、六〇度に設定されているのも、鼻をかんだハンカチを洗うためだという人がおりました。冷たい水では、ハンカチがきれいにならないからだそうです。

高緯度に位置するパリは、花粉症の時期もわが国より遅く復活祭を過ぎてからがピーク。4月、セーヌ川の水かさがふえ、マロニエをはじめ色とりどりの花がぱあーっといっせいに咲くと、町中に花粉が蔓延。鼻のかみかたが大げさだと申しましたが、私の知るかぎり花粉症のパリっ子は少数派。大型バスから降りてくる全員でマスクをしている日本人観光客の姿が奇異だと、私の友人たちがいってましたっけ。「みんな病気なの?」といぶかしむ彼らへの返答に窮し、とっさに「マスクがアラモード(流行)なのよ」と曖昧に私。たしかに、よほどの病人でもないかぎり、フランス人はマスクをしません。そもそも基礎体力からして、彼らは私たちの比ではありません。階段を駆け上がる彼らの軽快な靴音、風邪をひかない子供たち、居眠りをしている人がいない車内etc. 「いつも元気そうだね」といわれるたびに内心、彼らと伍して暮らすうちに逞しくなったのかもと私。環境が清潔すぎるとアレルギー患者がふえるともいわれますから、なるほど、これからは不潔のすすめかも。今日はビローウな話でごめんなさいね。