不揃いがかわいい

2012/12/15 

またひとつ、クッキーに教わりました。この一年、本業そっちのけで『クッキー缶』作りに夢中でした。GSをはじめて五年半がたち、とくに今年は怒涛のようでした。オープンから私がたより切っていた、ヒロコちゃんがおめでたいことに結婚退社。玉のような赤ちゃんを連れてGSに顔を出してくれる彼女は、新妻と母親らしい落ち着きをそなえたチャーミングな女性に成長。おかげさまで、GSのまわりに幸せのオーラが漂っております。

営業時間を終え、売り場の明かりを落として調理台でクッキー生地を捏ねている私の脳裏に走馬灯のように、今までGSであったことや、店にいらしてくださった方とお話ししていたときの光景が現れては消えていきます。出版物は中国本土で翻訳が一冊という体たらくでしたが、これもまた私の人生かもと、クッキーを捏ねるほどにひとり上機嫌になってゆく私。なにかを真剣に考えても、無責任にとぼけてみせても同じように時間は過ぎていく。いつの間にかふんわか気分になれるのですもの、『クッキー缶』作りはやめられません。

ここで『クッキー缶』について、簡単にご説明させてください。GSでいつも作っているマドレーヌやフィナンシエ、クッキーとはべつに今年のはじめから、ご予約で作る『クッキー缶』に気合をこめております。見た目は色と形がとりどりの、クッキーの吹き寄せです。長方形の缶の世界に、今は15種類の手捏クッキーがぎっしり。手間がかかることこの上ない作業なので、営業時間内ではとても仕上がりません。今年を振り返ってみれば、この『クッキー缶」が完成したことが大収穫でした。これを書いている一時間ちょっと前、あることに気がついて慌てて帰宅してPCを起動。まん丸く捏ねた生地の真中に、四角く切ったフランス製のオレンジピールを埋め込んではバットに黙々と並べていて、“不揃いがかわいい!!! 不揃いだから、かわいいんだわ!!!”と、思わず頬が緩みました。自分で作ったクッキーを愛でて悦に入っては自画自賛もいいところですが、工場生産品のクッキーに不揃いは望めません。手作りならではの不揃いに、正々堂々と胸を張りましょう。缶の中の15種類の個性的なクッキーたちが、それぞれに自己主張。これもいきつくところ、フランス語でいうレゾン・デートル(存在理由)ではと納得して、いいお年越し(笑)。今年もお世話になりました。来年もこのページをよろしくネ!!!