『東方見聞録』

2012/7/1 

「素晴らしい!!!!!」の一言につきます。なにが素晴らしいかといって、マルコ・ポーロの『東方見聞録』の全訳が日本語で読めるのが素晴らしい。お会いしたことはございませんが、中世フランス語で書かれてあった原本を翻訳なさった月村辰雄教授に、盛大な拍手をお送りしたいと思います。それにいたしましても、原本が中世フランス語だったというのは驚きでした。ヴェネチア生まれのマルコ・ポーロさまの大旅行が1271年からの24年間なので、時代はまぎれもなく中世。フランス語で書かれていたわけを、巻末にある「マルコ・ポーロを原典で読む」の訳者あとがきではじめて知りました。教会権力真っ盛りの時代ですから、公文書の類はラテン語かフランス語だったそうです。たしかに、南仏のアヴィニョンに法王庁が置かれていたことがあったのですから納得です。興奮さめやらない思いで、つづけますね。

『東方見聞録』という本の題名を知った中学生のころから、本書への興味が私の心の奥底にくすぶっておりました。パリから東京に一時帰国したとき繁華街でみつけた、『東方見聞録』という居酒屋チェーンの店名に、目が釘付けになったものでした。まっこといい名前をつけたものだと、居酒屋のオーナーさんを誉めてあげたいと思いました。わが国がジパングと呼ばれ、黄金の国であるかのように書かれているらしい。本書が西欧社会に東洋の神秘を知らせたことで、後の大航海時代の先陣を切った存在として位置づけられているではありませんか。ほかにもありますが、実際に読んでいないのですから、すべてが想像の域でした。ところが本書の出現により、霧に閉ざされていた無数の疑問が一挙に氷解。マルコ・ポーロさまが崇拝する大カーン・クビライは、フビライ帝その人でした。鎌倉時代に二度あった、元寇の役から本国に戻った兵士たちから又聞きしたという、マルコ・ポールさまの日本情報の部分は圧巻。15000キロの長旅をマルコさまとご一緒できて私は、ほんとうに幸せでした。どうぞみなさまもご近所の書店さんで、ぜひ立ち読みしてみてくださいな。