両雄は赤ワイン煮とロースト・ビーフ

2012/1/15 

坂道を下りながら、フランスの地方料理について考えました。坂というのは神楽坂のことで、GSからの帰り道でした。夜の冷え切った外気とは裏腹に、フランス全土の地図を思い浮かべて全身ほっこり。やはり牛肉の赤ワイン煮とロースト・ビーフが、お肉料理の両雄にちがいありません。名物料理を思い浮かべて、瞬間湯沸かし器のテファールのスイッチをオンにして熱めのおさゆをごくり。GSから戻って物書き稼業の第二ラウンドが終るまで、お酒はおあずけです。

フランス料理の起源はイタリアにありと、おっしゃる方もいらっしゃいますが、その場合はソースのある洗練されたお料理のこと。16世紀、名門メディチ家のカトリーヌ王女がフランスのヘンリーU世と結婚するときに、生家フィレンツェから腕っこき料理人を連れてきました。その料理人がフランスの王侯貴族にふるまったご馳走が、高級フレンチの元祖です。それまでのフランスでは、王侯貴族でさえ食事は手づかみ。輸送手段や冷蔵技術もなく、つい最近まで料理は地産地消。食卓にナイフとフォークが定着したのはずっと後で、料理といえば煮込みがほとんどでした。そこまで考えて頭をよぎったのが、ロースト・ビーフのことでした。

牛スネ肉の赤ワイン煮は、まさに地方料理の王者です。赤ワイン煮のレシピはまたの機会にして、今日はもうひとつの雄のロースト・ビーフについてお話しましょう。前者が牛すね肉で作るのに対して後者の部位は上等な、牛のフィレか肩やモモ肉。質素が信条の地方料理に、ロースト・ビーフが入っていない理由がうなづけます。牛肉の塊の表面にニンニクと塩と胡椒を大胆にまぶし、多めのオイルで素早くフライパンで焼き焦げをつけます。そのままオーブンに入れて、250度で20分弱が目安。美味しく仕上げるコツは、オーブンから出したお肉を、アルミホイルでぐるぐる巻きにして3〜40分寝かせること。下味を濃くして高温で焼いて、ぐるぐる巻きにすればフライパンだけでもOKですよ。