マンマとママン

2011/8/15 

イタリアとフランスって言葉だけでなく、かなりちがいます。古いですが『ローマの休日』という映画のラストで、主人公でお姫さま役のヘップバーンが相手役に、どこの国がすきかと問われるシーンがあります。もちろん、「ローマです」と言い切るわけですね。ところが私がアンケートをとったかぎりでは、英仏独の人たちに圧倒的に人気なのがヴェニス。たとえば「今まで旅行して、どこが一番よかったですか?」と問うと、過半数の方がヴェニスと答えています。フランス派の私も、その意見に異論の余地はありません。ヴェニスはなんといっても、町自体が素晴らしい。ちなみにパリの魅力は町自体ではなく、そこに暮らす人々の、しいていえば癖のある人間性が面白い。今日は不謹慎のそしりを覚悟で、ご旅行のお誘いです。予備知識というほどではありませんが、欧州旅行の双璧ともいえる仏伊のこんなお話はいかがでしょう。

両国のちがいの最たるものが、お料理です。かといってイタリア料理とフランス料理では、使うオイルがちがう。オリーヴ油とバターのちがいだといったレベルのお話ではなく、作り手のことです。イタリアでは厨房を仕切るのが女性の場合が目立ちます。そして愛想のいい夫が、表のサービスを担当。マンマの料理がすべてというイタリア人の、面目躍如といえます。対するフランスは、ごく稀なケースをのぞいて、料理は今でも男性の聖域に近いです。

「料理や旅行どころじゃないでしょう!」と叱られそうですが、思いかえせば中東戦争がありましたし、ボスニア戦争もありました。パリに住んでいたころのことですが、そのたびに夕方と深夜のニュース番組に釘付けになったものです。あのときの女性人気キャスターが、DSKことIMF前専務理事のストロス=カーンの奥方になっていたことを、今回の事件で知りました。戦争がおこると繁華街の喧噪がとだえ、世の中が不景気風に包まれたものです。とはいえ戦争は、あくまでも人災。3.11の悲惨さとは、くらべるべくもありませんが、円高の行方が気になります。