ペンキとクロスのちがい

2011/8/1 

「パリの家、きれいだったですよね」
十数年ぶりに会った友人の、開口一番がこれでした。パリの家というのはほかでもなく、私たちがパリで住んでいた家のことです。友人がなにげなくいったひとことで私は、一念発起。汗まみれで、大掃除に取りかかりました。カーテンを外して洗い、壁の汚れをていねいに拭きました。パリから持ってきたままになっていた版画類を整理し、GSに飾れる作品をより分けました。おかげさまで、磨き掃除のゆきとどいた蚤の市みたいな、狭いけれども小気味よい部屋になりましたよ。

友人がきれいだったといった真意は、パリの古いアパルトマン特有の建築様式や内装が素晴らしかったことにあります。フランス中どこにでもありますが、居間と廊下の床は木製のモザイク。わが家の場合、リビングに革のソファー四点セットを置き、その部分にペルシャ絨毯を敷いてました。私と娘は2X5の10uずつの小部屋でしたが、明るいベージュのカーペットを敷き詰め、それぞれにSベッドと机を置いて快適でした。部屋が正確な長方形ではなく、おまけに作り付けの本棚や暖房用のパイプが通っていたので、壁に凹凸が多く、カーペットの敷き込みに手間取りました。ところが、面倒なぶんだけ仕上がりの満足度がますものなのです。だれも、簡単なプラモデルは作りたくないですもんね。

大掃除のあとにわが家にいらした方が、こういって驚きました。「えっ! この家、壁紙じゃなくてペンキだったの? 今どき、ペンキ塗ってるうち、あるのね」と。驚いたのは私のほうで、目ウロコそのもの。私が信じて疑わなかった白い壁のことは、漆喰にペンキだそうです。そして一般的なそれはペンキではなく、白いクロスを張った壁でした。大差ないとお思いになるかもしれませんが、私にとってこのちがいは大問題。もしかしたら今回の白壁のほかにも、私の勘違いがあるかもしれませんものね。私におかしなところがあったら、どうぞご指摘ください。