ドヌーヴさまは大女優 2011/1/15 

さすが、ドヌーヴさまですわ。堂々たるお姿といい、身のこなしといいセンスといい、大女優の名をほしいままにするドヌーヴさまに喝采。お若いころの繊細な美しさは願うべくもございませんが、マダム然とした迫力が魅力。わが国の女優さんでドヌーヴさま格は、はたしてどなたかしら。世界に通用するかはともかくとして、松阪慶子さんあたりで和製ドヌーヴさまではどうでしょうか?

ドヌーヴさま主演の映画鑑賞は、昨年の秋冬からつづいていました。母娘ものの『隠された日記』が第一作で、二作目が『クリスマス・ストーリー』。マストロヤンニとの間の実娘も出演。キッチンで彼女が立ち飲みしていたカフェ・オレのカップが、私が使っているのと同じだったので、ちょっとうれしかったです。前の二作についていえば、劇中のドヌーヴさまがいみじくも私に、過ぎ去ったパリ生活の悲哀(笑)をまざまざと思い出させてくれたのでした。「たしかに、いたいた、こんなマダム。なにかにつけてごねなくては、フランセーズの沽券にかかわるとばかりの傲慢さだわ」。わがままで厄介で、相手に気を遣わせることが生き甲斐のような彼女たちを、ドヌーヴさまが見事なまでに演じます。役柄とはいえ、いつも不機嫌なものだから、たまに見せる笑顔がなんと素晴らしく感じられたことでしょう。

三度目の正直に賭けるつもりで、『しあわせの雨傘』を新宿で観ました。ドヌーヴさまの代表作のひとつ、『シェルブールの雨傘』をイメージしておりましたが、意外なことにコメディー仕立て。時代背景が1977年なので、私がパリで暮らしはじめたころのファッションがこんなだったのかと、はからずも映画で時代考証。サン・ミッシェル通りにある、シモンという老舗の傘屋さんのマダムも美しい方でしたっけ。映画館を出て地下道を歩きながら、100円のビニール傘もいいけれど、おしゃれな傘が一本くらいあってもいいような気になったものです。