ヤドリ木のお話 2010/12/15 

松江のOさんから届いた宅配便の段ボールを開けて、「ウワッー!」と息をのみました。オアシスをもらいに、ご近所の「花とよ」さんに走り、さっそくGSの表に活けました。朝の白い光、日中の黄色い光、午後のブルーな光といった具合に、時間とともに移ろいゆく陽を浴びてヤドリ木が、道行く人々にやさしく語りかけます。こんなに素晴らしい贈りもの、あるでしょうか。平安の昔からヤドリギが、<ほよ>と呼ばれていたと教えてくださったのもOさんでした。

年の暮れになると、ドイツやフランスなどヨーロッパの国の町の辻つじに、にわか仕立てのヤドリ木を積んだ屋台がたちます。フランス語でギーというヤドリ木の小枝が、家々の玄関先に飾られます。古くから薬効が認められていたので、おまじない的な要素もあり、ぽきぽき折れてまん丸い実をつけるヤドリ木は、祝祭日やクリスマスのお飾りになりました。ヤドリ木の下で出会った男女は、幸せになるという言い伝えもあるんですよ。更新したphotoを、クリックしてくださいましたか?

わが国にも雑木林にいけばヤドリ木があるのはわかっておりましたが、入手できないと思い現実味がなかった。ロワール川に沿って車を走らせていたとき、または鉄道で地方を旅したときの思い出の中にいるヤドリ木の記憶を今まで、後生大事にしていたわけです。木々が枝を広げる春夏、親木といっしょになってヤドリ木も茂ります。ヤドリ木は常緑樹ですから、親木の葉が落ちても健在。灰色の空に黒々と枝を這わせた親木の幹の間で、ヤドリ木の部分だけがぽっかり有彩色で浮かび上がる景色はまさに幻想絵画の世界。そんなヤドリ木がGSの表にあるなんて、それだけでも今年は立派に素敵な年でした。