コンフィチュールについて 2010/08/15 

今ではジャムはジャムではなく、コンフィチュールと呼ばれるようになりました。贈答品やお土産に定番化し、各国の、そして全国各地にコンフィチュールが誕生。言葉の魔術か、ジャムよりコンフィチュールといったほうが数段おしゃれ。私の祖母など、ジャムではなくジャミといっていたんですから笑えます。熱々の日東紅茶にお砂糖をたっぷり入れて、バターを塗ったトーストにジャミつけて食べるのが、祖父母の朝食でした。夏休みに母の実家にいったとき目にした、半世紀も昔の光景です。

昭和のジャミでつまづいた話を、コンフィチュールに戻します。略してコンフィで、ラルース料理大辞典によりますと、コンフィもまた十字軍の副産物。アラブ世界に遠征した十字軍の一行が保存用に調理されたコンフィをみつけ、サトウキビとともに手法をヨーロッパに持ち帰ったそうです。果物を砂糖で煮たものだけでなく、鴨や豚などの肉を脂で油煮にしたものもコンフィ。今月の<GSの夕べ>にご用意する鴨が、まさにそれです。神楽坂の路地裏で鴨のコンフィを作ろうとは思いませんでしたが、材料の鴨のモモ肉はフランス直輸入。

鴨やガチョウの肝臓を肥大させた、名物フォアグラを取った後に残った肉の部分を、生産地でコンフィに加工。多めの塩に漬けた鴨肉を、低温で油煮して瓶詰めや缶詰にします。スーパーの保存食コーナーにならんだコンフィを買い、自宅のオープンでこんがり焼き直していただきます。一般のフランス人は、コンフィから作ることはまずありませんが、地元の農家の主婦たちは、自分たちが食べる分を台所で作ります。鴨が群れをなすかまびすしい屋外とは対照的に、薄暗い台所の作業台で大量の鴨のモモ肉と格闘するマダムたちの逞しい姿が懐かしく思い出されます。やっぱり想像力が、最大のご馳走ですね。