チグハグはだめよ! | 2010/07/15 |
たとえば、高価な有田焼の深皿に、肉じゃがを盛っても似合いませんよね。鯛や平目のお刺身と、お芋の煮っころがしでは料理の格がちがう。良し悪しでは、けっしてないのです。お料理の世界も民主主義なんだからという反論もおありでしようが、私は肉じゃがは素朴な土ものに盛りたい。よしんば有田焼に映えたとしたら、それはお料理の上級編。肉じゃがには、肉じゃがにしかない美味しさがります。鯛に鰯のまねはできませんし、反対も無理です。鯛のお刺身、鰯のたたき、肉じゃがが本来の出番をわきまえてこそ、それぞれの料理の尊厳が保たれる。マッシュポテトを付け合わせにしたステーキにはリモージュではなく、食洗機に入るビストロ食器がいいと思います。 深窓のご令嬢が肉じゃがを、食器棚に並んでいる有田の香蘭社の器に盛ったとしたら・・・ 福沢諭吉の『学問のすすめ』に、こんな一節があります。「西洋の諺に愚民の上に苛(から)き政府ありとはこの事なり。こは政府の苛きにあらず、愚民の自ら招く災なり。愚民の上に苛き政府あれば、良民の上には良き政府あるの理なり。故に今我日本國においても此の人民ありて此の政治あるなり」。書かれたのが、なんと明治5年から9年とありました。西暦にして1870年代ですから、つい復唱してしまうほど驚きです。つまり、過大評価も期待しすぎも、無関心もすべて私たち一人ひとりの責任。肉じゃがが硬い話になりましたが、人生も政治も、納得のいく方向に持っていきたいものですね。
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