想像力と読書 2009/09/01 

「本を読め」と、若者を相手に口うるさくいっていた世代がいなくなりつつあるのは、なんとも寂しい気がします。もしかしたら彼らは、「もっと本を読んで想像力を磨け!」といっていたのではないでしょうか。「一を聞いて十を知る」のは、いいことばかりではありません。世の中には知らないほうが、分からないほうが幸せなことがたくさんありますから。ちょっと理屈っぽくなりましたが、知識や教養もふくめて想像力を豊にしてくれる本との出会いって、素晴らしいですね。

想像力がたくましすぎて妄想に走ったとして、だれに咎められることがありましょうか。読み進むほどに夢中になり、痺れるほど面白い本はドラッグ以上の興奮作用をもたらすにちがいありません。それではこれから週末の午後の数分間、アルザス地方に住む親友のヨアンの家にご一緒しましょう。目を閉じて、青い空から家々の屋根に舞い降りるコウノトリをご想像ください。初秋をむかえた村に、穏やかな時間が流れます。シュヴァイツァー博士が弾く、オルガンの音が聴こえるようです。キッチンから、酵母が膨らむ匂いがしてきました。

やがてあたりに、こげたチーズの香りが漂ってきました。このときになって私たちは、ヨアンが用意してくれているのが、薄くのばしたパン生地に刻んだ玉葱とチーズをのせて焼いた、タルト・フランベであることを確信。クレープの親分のような、またはピザの子分のようなタルト・フランベですが、実は最近はパリでも人気です。前菜ですが、パリでは質量ともに単品でOK。オーブンから運ばれる熱々のタルト・フランベにレタスのサラダと冷えた白ワインがあれば、申し分なしのアルザス料理になります。やはり食べ物の話は、楽しいですね。