「食」でつながる素朴な関係 2009/06/01 

わが家の玄関先が、にわか作りの花壇になりました。といっても地面がないので、植木鉢をならべただけです。きっかけは先月、お食事にお招きした五人の女性たちがくださった、無数に白い花をつけたスパティフィラムの鉢植えでした。ダイニングキッチンのすみでけなげに咲いていた白い花に昼間、日光を当てて上げようと思ったからです。私がGSにいってだれもいなくなった薄暗い部屋で、花にお留守番をさせてはかわいそうですもの。

そして夜、帰宅して玄関の鍵を開け、外に出しておいた略してスパを室内に持って入ります。出たり入ったりするのはスパだけで、前から外に出してあったピンクの紫陽花とペパーミントの鉢植えは定置。植木鉢を玄関先に出して鍵を閉め、「いってきまーす!」と花たちに声をかけてGSにいくのが、私の朝の習慣になりました。

そんなある朝、家から数メートル離れたところで私は、スパの白い花のささやきを聞いた気がしました。私の背中にむかって白い花が、たしかにこういったのでした。「お友達を呼んで家でご飯を食べるのが、あなたの趣味だと思えばいいんだわ。コンサートやお芝居が趣味の人がいるんですもの、あなたのようにお料理を作ってお友だちと一緒に食べるのが趣味の人がいてもいいのよ。今日も元気で、GSにいきなさい。GSでヒロコちゃんとマサノちゃんが、あなたがくるのを待ってるわ」

白い花がいってくれた一言で、それまで私の中で澱のようにわだかまっていたものが一挙に音を立てて氷解したのでした。自宅でのおもてなしが生活習慣になっているフランス人のことはほどほどにして、私の趣味を話題にしましようと。あの朝を境に、家に人を呼んで一緒にご飯を食べるのが、私の一番の趣味になりました。