GSの路地が黒塀横丁になりました 2008/09/01 

「秋にならなかったことはない」と念じながら、背中にオーブンをしょっていた夏の日がウソのような季節になりました。残暑予報もなんのその、大雨の合間に吹く風も日差しも、あのころとはちがいます。四季のある国に生まれて、本当によかったですね。ところで、はるか彼方にオアシスをみつけたとき遊牧民は、砂漠に生まれたことの幸せを実感するのでしょうか? 残念ながら、遊牧民に知り合いがいないので、彼らの気持ちを知るよしがありません。それより、これから焼き菓子が美味しい季節になります。濃い目にいれたお紅茶で香ばしいナッツのクッキーやマドレーヌをつまみながらの読書は、まさに秋の醍醐味です。

数日前の午後、なんどもGSにいらしてくださっている横浜の奥さまが、三十年来のお仲間をお連れくださいました。拙著にも書いておりますが、私が思う理想の奥さま像でもあるサザエさんに似ている彼女。おおらかで、はにかみ屋さんでちょっとセンチなかわいい彼女。お二人にお紅茶を運びながら、生まれ変わったら専業主婦もいいかしらと、ついぞ思ったこともないことを考えた自分が不思議でした。でもよくよく考えると、GSをはじめる以前の読書三昧の生活への、未練だったかもしれません(笑)。

話は飛びますが今週、GSの路地に黒塀が完成しました。土地っ子にとって神楽坂といえば、毘沙門さま辺り一帯がメイン。ところが最近は、大久保通りをこえたGSのある六丁目もなかなかなもの。住めば都でもありますが、加えて数日前に老舗出版社の『音楽之友社』さんの角を曲がったGSまでの十数メートルに、黒塀が出現。工事がはじまるというので、すわ東京都が推進する黒塀プロジェクト第一号かと思いきや、設置費用は『音楽之友社』さんの自腹でした。社長の堀内さん、本当にありがとうございました。ぜひみなさん、『音楽之友社』さんが作ってくれた粋な黒塀をみにいらしてください。それでは、パリに行ってきますね。