楽しく作る美味しいお菓子 2007/07/01 

オープン準備の期間、ひとつだけ自分に念を押しました。「あくまでも、楽しむためのお店なのだからね」と。こんなことを申しますと、読者さんの中にはよほど私が辛い思いをしているのではないかと勘ぐる方もいらっしゃることでしょうが、ご心配なく。ショップも厨房も、喫茶スペースもどこも、かわいいスタッフに恵まれて和やかな雰囲気に包まれています。そして厨房の慌しさとは裏腹に、2階の喫茶スペースに流れている時間の、なんと緩やかなことでしょう。

家庭用のオーブンなら上手にできるはずのマドレーヌの焼き上がりに満足できず、なんども作り直す一幕はございましたが、おおむねすみやかに運んでいます。それでは、なにもかもが首尾よく進んでいるのかといえば、そんなはずないじゃないですか、当の私が初心者なのですもの。

細かなことで漏れている箇所が多く、オープンしてから数日は河童橋に日参しました。河童橋というのは東京の道具街で、調理道具や伝票など商売まわりの小物が一通りそろう街。準備段階でもっとも難渋したのが、包材でした。できあがったカトル・カールを入れる袋や包み紙などがそれで、食品の場合はシリカゲルやエージレスなどが必要になります。
なにごとも経験とめげないふりで河童橋通いに明け暮れていた私に、愛の手を差し伸べてくださったのが清一郎さん。神楽坂の<毘沙門せんべい>のオーナーで、商店会々長の福井清一郎さんは当初、私のGSプロジェクトに反対でした。「れっきとした本業があるのに、わざわざ苦労することないでしょ」とおっしゃりながらも、いざとなると最強の味方。工事でも全面的にお世話になりましたが、電話一本で親切な包材業者をご紹介くださいました。業者さんが親切なのではなく、清一郎さんとの関係があればこそのこと。どの世界も、キーワードは信頼できる人間関係というわけですね。