八月のパリ 2006/08/01 
パリが猛暑に襲われ、連日36℃を記録したとのこと。取材でフランスの地方を訪れていた、三年前の悪夢が甦ります。炎天下のブドウ畑の真ん中で、目はかすみ頭クラクラ。この世のものとは思われない激しい夏でした。

最近でこそフランスでも、地方の高級ホテルやパリ市内の三ツ星以上のホテルにはクーラーが普及しましたが、一般家庭にはありません。私がパリに住んでいた20年間で、耐えられないほど熱い夏は一度もありませんでした。石の建物の中は真夏でも涼しく、同じ掛け布団で一年中間に合ってしまうといえば、おわかりいただけるのではないでしょうか。

冷温共用エアコンも、フランスでは見かけません。10月中旬から復活祭の4月まで、暖房フル稼働のパリなど、エアコンで厳しい冬を凌げないからです。冷房より暖房が肝心のはずだったフランス人にとって、「昼間は出歩くな。水をたくさん飲んで、顔や身体にも水をかけるように」とお達しがあったほど暑い夏がどれほど辛いか、想像に難くありません。

それでもフランスの夏は、八月になると急に暑さが萎えてしまいます。加えてパリっ子がバカンスでいなくなった町はどことなくすすけ、レストランや一般商店の半数が休業。フランス中にシャッター通りが出現し、まったく絵になりません。とはいえ最近のパリは有名ブランド店を中心に、八月も営業。東欧からのツーリストも多く、以前ほど侘しさは感じなくなりました。でもせっかくならパリ旅行は、秋風を待ってからにしたいもの。一足早い晩夏のパリを心に描きながら、日本の夏を乗り切ることにいたしましょう。