神楽坂を壊すな 2006/06/15 
神楽坂の町に今、高層マンションの建築計画が持ち上がり大騒動です。場所は神楽坂の中心、飲食店が集まる本多横町の賑やか一角。東京にノッポビルが次々に建ち、町から地面が消えていく昨今にあって、人肌の温もりを感じさせてくれる路地の町、神楽坂は貴重です。そこに14階のマンションができてしまっては、せっかくの景観が台無し。そこで「毘沙門煎餅」のオーナーで商店会長の福井清一郎さんを中心に、反対運動が盛り上がります。

テレビや新聞、雑誌に引きも切らず登場している町だけに、今回の反対運動へのマスコミの注目度は相当なもの。料亭さんや文士旅館のご常連お歴々のご支援もいただき、着々と運動の成果がみえているようです。そんなとき私は、町の景観を守るためにはバシバシ公権力を行使する、パリ市のやり方を思い出しております。

個人主義だといわれながらもフランスは、公権力が絶大な国です。たとえば、住んでいるアパルトマンの地域が都市計画に組み込まれ、取り壊しが決まると住民は強制退去。持ち家ならば、代替住居が提供されますが、等価交換などという生易しいものではありません。パリ市内に住んでいた私の親友に市が用意した住居は、パリから50キロも離れた質素な公営住宅でした。条件が合わないからと断るのは勝手ですが、ごねてもまったくムダ。私有財産の保護法はあっても、お上には抗えません。住み慣れたパリをあとに親友夫婦は、泣く泣く郊外に引っ越していきました。

町の美観もしかりで、お上がダメといったらダメ。多くの個人の犠牲のもとに、現在のパリの町の美しさは保たれているわけです。それにしても、なにかにつけて一筋縄ではいかないフランス人が、素直にお上のいうことを聞くとは意外でしょ?その裏には、国家が国民を守っているという大前提があるわけです。・・・、愛国心なんて、持てといわれて持てるわけじゃないですよね(笑)