パリの手わざ 2006/01/15 
今、フランスの職人の本を準備中です。数年前に出した「パリの手わざ」(平凡社)が、角川書店から新書で再出発することになったからです。

単行本が新書や文庫になるときは、最小限の手直しですませてしまうことがほとんどです。だからこそ著者は、二度美味しいわけですね。ですが私は、あえて書き直しすることに決めました。新書になるに当たり読み返しましたら、原本を書いた5年前に気がつかなかったことが多々あったからです。

フランスで健在な「職人」が、どうして日本の町から姿を消してしまったのかしら?たとえば傘職人がそれです。私たちが幼いころ、ほんのたまでしたが、傘修理のオジサンがご近所に来ていました。ところがいつの間にか、“傘は修理するよりも、買ったほうが安い”が、当たり前になってしまった。ことの是非はともかくとして、買ったほうが安いのは確かだけれども、直して使ってもいいじゃないか。そんなことを思ううちに私は、修理に耐えうるモノを作るのが職人でもあるという、やや突飛な結論を得たのでした。だからこそ、フランスにブランド品が集中しているわけで、彼らのモノに対する価値観の真骨頂ともいえるのではないでしようか。

というわけで今の私は、パリで訪れた職人さんたちの工房に思いを馳せています。そして知りたいことがあると机の上の時間の針を日仏の時差分の8時間もどし、パリの工房にいる職人さんに電話します。こういう私も実は、職人的な物書きになりたいと、切に願う一人でもあります。